日蓮聖人降誕800年
日蓮宗全国霊断師会連合会
日蓮大聖人が歩まれた道 日蓮大聖人が歩まれた道

#020

くうぞうさつへの願い

虚空蔵菩薩に願を立て云く、日本第一の智者となし給へと云云

(善無畏三蔵鈔)

その日、清澄寺のご本尊としてご奉安される虚空蔵菩薩の前には、出家を果たし蓮長(れんちょう)となった若き日蓮大聖人のお姿がありました。蓮長は一つの大きな願いを胸に、虚空蔵菩薩に一心に祈りを捧げていたのです。「我をして、日本第一の智者となし給へ・・・」と。

虚空蔵菩薩への願い

虚空蔵菩薩は、東方大荘厳世界と言われる浄土の菩薩さまで、五智宝冠(ごちほうかん)(大日如来を始め、諸佛の智慧の冠)を頭に頂き、右の手には智慧の利剣、左の手には福徳の如意宝珠を持っていることから、広大無辺の智慧と福徳をつかさどる密教の菩薩として知られています。

蓮長が虚空蔵菩薩に智者第一の願掛けをしたエピソードは、多くの御一代記で語られるところですので、皆さんも何かの折にご覧になったことがあるでしょう。しかし、その内容が如何なるものであったかは、意外とご存じないかと思います。

後に日蓮さまがその詳細について触れられることはありませんでしたので、残念ながら正式な史実を知ることは出来ません。ですがこの時代に密教の盛んな清澄寺にあって、虚空蔵菩薩への願掛けを行ったのであれば、おそらくそれは「虚空蔵菩薩求聞持法(こくうぞうぼさつぐもんじほう)」であったと思われます。

「虚空蔵菩薩求聞持法」は、締め切ったお堂や洞のような空閑寂静な場所に籠もり、百万遍もの陀羅尼(だらに)(神佛の発する呪文)をひたすら唱え続けるという、大変厳しい密教の修行です。その間は作法に従ってわずかな穀物や水を口にするだけで、睡眠もほとんど取ることはありません。近代となっても、希にこの求聞持法に挑む修行者がいるとのことですが、聞き及んだところでは、あまりの極限状態に心身に異常をきたし、途中で断念する者はもちろんのこと、時には命を落とす者もいる程の荒行なのです。

この求聞持法は、通常五十日、ないし百日間で行うと定められているのですが、何と蓮長はわずか二十一日間でこれを成し遂げたとされているのです。

イラスト 小川けんいち

※この記事は、教誌よろこび平成25年2月号に掲載された内容です。
小泉輝泰

小泉輝泰

宗会議員
霊断院教務部長

千葉県顕本寺住職

バイクをこよなく愛するイケメン先生

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