日蓮聖人降誕800年
日蓮宗全国霊断師会連合会
法華経のお話 法華経のお話

#029
無量義経の段その五
(三)

大重鎮のご出馬

最強の妖怪は誰だ

「一時佛住。王舎城(おうしゃじょう)。耆闍崛山(ぎしゃくっせん)中」

王舎城(またの名を王赦城)の中心部より東北の方に変わった形をした小高い山があります。山頂(峰)がまるでハゲワシの頭部のような形をしたその山こそがギッジャ・クータこと耆闍崛山です。

ギッジャとはハゲワシのこと。故に単に鷲峰山や鷲頭山という呼び方もありますが、これでは単に変わった形の山というだけのこと。

やはり霊鷲山という名前こそ、この神秘なるお山にふさわしい名前でしょう。

その名のごとく、ここには沢山のハゲワシや諸々の霊や魔が集まる山、ゆえに名付けて霊鷲山というわけです。

前回の斑足王(はんそくおう)の羅刹(らせつ)たちもこの山の霊の一種。さらに霊鷲山の魔物についてはこんなお話もあります…。

敵妖怪の策略や猛攻に窮地に陥った悟空たちのもとに、その妖怪と縁ある菩薩や佛教・道教の守護神が救援に赴くというのが、西遊記のいつものパターンです。

大重鎮のご出馬

救援に駆け付けるのは最多登場の観音菩薩を筆頭に、弥勒菩薩、文殊菩薩、老子、毘沙門天の御子息の太子、暦でお馴染みの二十八宿、華厳経の主人公善財童子(ぜんざいどうじ)、陀羅尼品(だらにほん)の毘藍婆(びらんば)等々と錚々たるメンバー。

しかし今回は異例中の異例な事態となります。

「獅駝洞の三妖怪…ならば敵は三大王!私が行かねばなるまい…」と、なんとお釈迦様おん自らご出陣されるのです。

こんなことは作品中ではヤンチャだった頃の悟空を封印するためお出ましになった以外は唯一のこと。しかもお釈迦様は本来、三蔵パーティの目的地(大雷音寺(だいらいおんじ)ですね)で待っているべき立場です。

その基本設定をも破るパターンに展開するわけですから、まさに三大王こそ、西遊記最強の敵役と言っていいわけです。

お釈迦様は悟空に説明します。嘗て恐ろしい力を持った凶鳥・大孔雀が世を乱していたのを私自ら手を降し調伏した。敗北し改心した凶鳥こそが今の孔雀明王(くじゃくみょうおう)である。そしてあの三大王こそは明王と同じく鳳凰の卵から生まれた大鵬金翅鳥(たいほうきんしちょう)如来以外に倒せることはできないと…。

塩入幹丈

元霊断院主任

福岡県妙立寺前住職

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