日蓮聖人降誕800年
日蓮宗全国霊断師会連合会
日蓮大聖人が歩まれた道 日蓮大聖人が歩まれた道

#084

天台沙門日蓮

今日蓮が相承も亦復是の如し。法華経の『能窃為一人説法華経乃至一句当知是人則如来使』等の文に依て釈迦如来を本師と為し、結要の付属を勘へ上行菩薩の流れを汲んで、師資相承の血脈を列ぬるなり。問ふ、法華宗の名言これ同じ、何ぞ天台を高祖と為ざるや。答ふ、今外相は天台宗に依るが故に天台を高祖と為し、内証は独り法華経に依るが故に釈尊、上行菩薩を直師とするなり。難じて云く、汝偏執なり。答へて云く、日蓮一人に限らず、天台大師も外相は慧文、南岳に依ると雖も内証は道場所証の妙悟に依て釈迦を本師とするなり

法華宗内証佛法血脈
天台沙門日蓮

鎌倉の辻に立たれ布教を始められた頃の大聖人は、『立正安国論』を始め色々な論書やお手紙の中で、ご自身の身分を「天台沙門」と名乗られています。そのことからも、あくまで天台宗派に連なる僧侶としてのお立場を明示されて、布教を展開されていたことは明らかです。

当然ながらその理由の中心となるものは、大聖人の弘めようとする教えが、天台大師より伝教大師を経てご自身に正しく受け継がれた教義であることを、世の人々に明確に示す意図がありました。

以前にもお話ししましたが、蓮長として比叡山で学ばれた大聖人は、叡山の退廃ぶりを目の当たりにされました。それ故に、天台大師より正しく継承されるべきであった法華経教義の神髄を、ご自身が日の本に復興させるお覚悟で第一歩を踏み出されたのです。その決意は故郷を追われる身となった今でも決して揺るぐことなく、辻に立ち道往く人々に教えを説き続ける大聖人の胸の内にありました。それこそが「天台沙門」のお立場なのです。

天台沙門日蓮

その上で、口を突き放たれるお言葉は、あくまで「南無妙法蓮華経」のお題目です。それは伝教、天台をも超え、教主釈尊を直師として授かりし大秘法でした。一見矛盾するようなお話ですが、難解な教えなど誰も理解の出来ない末法の世に至っては、純粋なる信仰としてのお題目を以て衆生を救済することこそが、高祖と仰ぐ天台、伝教の遺命をも受け継ぐことに他ならないのです。

しかし闇雲にそれを訴えたところで、誰ひとりとしてその意義を理解出来る者などいるはずもありません。反って変わり者の坊主が、勝手気ままな自説を吹聴していると思われてしまうのが関の山だということを、他ならぬ大聖人ご自身が一番理解されていました。それ故に大聖人は天台沙門であることを明示され、これから予想される諸宗との論争に備えられました。鎌倉の人々が初めて耳にする「南無妙法蓮華経」のお題目は、釈尊直伝の御心であると同事に、何人たりとも否定することの出来ない盤石なる天台教義に裏付けられていることを、「天台沙門日蓮」の名を以て宣言されたのです。

イラスト 小川けんいち

※この記事は、教誌よろこび平成31年1月号に掲載された記事です。
小泉輝泰

小泉輝泰

宗会議員
霊断院教務部長

千葉県顕本寺住職

バイクをこよなく愛するイケメン先生

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