大轉輪王小轉輪王。金輪銀輪諸轉輪王。(無量義経徳行品第一)
風 希臘(ぎりしゃ)人の気づきも束の間。「ダイモーンの賜物」と讃えられた西洋の倶生霊神信仰は、あえなく悪魔デーモンへの恐れの中に埋没してしまいました。
まあこのことに限らず希臘そして羅(ロー)馬(マ)文明の偉大なる遺産は、そのほとんどが回教(イスラ)徒(ム)たちに受け継がれ、当の欧羅(ヨーロッ)巴(パ)では文芸(ルネッ)復興(サンス)の時来るまで、まったく顧みられなかったわけなんですが(もともとは回教圏の方が先進国だったんですね)。
それでも何者かが自分の傍に佇んでいる!誰かが見守ってくれている!幽(ス)波紋(タンド)が発現してる!という体験に裏打ちされた真理だけは、いかに異教を恐れ忌み嫌う基督教徒の方々も無視できないもの。
そこで彼らは自分たちの天使信仰の中に、うまく倶生霊神を組み込んで行くわけです。
天使と言うと頭の上には蛍光灯のような輪、背中には小さな羽根の美少年!というイメージが多いかもしれませんが、実はこれは羅馬の愛の神クピード(キューピット)と習合したイメージ。
実際の天使たちはその形態、能力、序列によって九つものカテゴリーに別けられた存在。
その最上位の三グループを見てみれば、六つの翼こそ最強の証、全身に炎をまとい常に光り輝く熾(セ)天使(ラフ)。
顔は人間にして体は有翼の獣身(スフィンクスを思い起こすべし)エデンの園の門番を勤める(要するに狛犬や唐獅子、シーサーの仲間ですな)智(ケル)天使(ビム)。
無数の眼、無数の羽に覆われし巨大なる車輪の座(ソ)天使(ロネ)…といった具合で、まさに人の姿からはかけ離れた存在。
ソロネに至っては生物型ですらなく、もはやオブジェそのもの(故にソロネを感得した人の記録は最古のUFO目撃例の一つとも言われています…)。
そんなバリエーションあふれる天使軍団にあって、単に美青年(あるいは美少年か)に羽が生えてるだけという最も人間的な姿、つまり私たち日本人にもお馴染みの天使像に最も近い天使たちなのが、九つの階級中第九位(それだけに人間に近いわけです)、お馴染みの守護(エン)天使(ジェル)なんですね。
上位の天使たちには、悪魔と闘ったり、最後の審判の時に人類を殲滅する等々の恐ろしくも壮大な使命があるわけですが、このエンジェルたちの使命はもっと日常に根差したこと、そう人間一人一人(ただし基督教徒に限る)を個々に守護するというもの。
例えばセラフにはミカエルやガブルリエル。ソロネならサンダルフォン等々と、各クラスごとにメジャーな天使がいるわけですが、ことエンジェルに限っては基本的にみな無名(守ってる人と同名ゆえ?)。
しかもその総人数は人類(但し基督教徒に限る)の二倍とのこと。
そう、まさしくエンジェル信仰こそは基督教における倶生霊神信仰そのものだったんですね。
しかしご守護があるのは自分たちだけと考えているのも、彼らしい処ですね。
かようにエウダイモーンへの信仰はエンジェル信仰へと変換されて、基督教に取り込まれていったわけですが、かような例はそうそうなかったようでして、広く中東から西欧にわたる多様な文化圏内の様々な神々は、酷いことにその殆どがデーモン(悪魔)へと分類されてしまいました・・・・。
そんな元神々だったデーモンを、賢王ソロモンは手足の如く使役したといいます。
堕天したと言っても本来は神であったデーモン。
ソロモン王は如何にして彼らを自在に操ったというのでしょうか?・・・
イラスト 小川けんいち
元霊断院主任
福岡県妙立寺前住職