日蓮聖人降誕800年
日蓮宗全国霊断師会連合会
法華経のお話 法華経のお話

#022
無量義経の段その三
(四)

千王起つ!

お経の冒頭はいつも「如是我聞(にょぜがもん)」からはじまるもの。『無量義経』もまた、この「如是我聞」によって舞台の幕が開かれます。

その幕あきと共に最初に説かれること、それはお釈迦様がこのお経―無量義経―を説かれた舞台、場所はどこであったかということです。

その場所こそ、後にひかえる「妙法蓮華経」の舞台である、印度佛教史上屈指の有名スポット「王舎城(おうしゃじょう)・耆闍崛山(ぎじゃくっせん)」なのです。

毎日毎日忽然と消えていく子供たち…。悲しみと恐怖のどん底に落とされた親たちは懸命に我が子を探しますが、手掛かりは何もなく、しかも被害者は増すばかり。パニックに陥った国民たちは王に謎の連続誘拐犯の逮捕を求めますが、むろん何の可決もありません。

国中の苦しみをしり目に、まるで憑かれたがごとく子供の人肉料理を食らい続ける斑足王。斉の桓公(かんこう)や三国志で有名な劉備(りゅうび)等々と、人肉を味わった王は意外と多いもの。されど毎日毎日食べ続けるとは、まさに良心のかけらも無くしたかごときありさまです…。

しかし、その非道にも遂に終止符が打たれる時がやってきました。事件解決に本腰を入れない王に見切りをつけた重臣たちが独自に捜査を開始したのです。

やがて露見する料理長の猟奇犯罪…しかも黒幕は我らが王…。

激怒した重臣たちはマガダ国が統治する千の国の王たちに助けを求めました。高徳の天羅王の後継者なればこそ、臣下の礼をとってきた千王もまた斑足王の非道には激怒し一斉に蜂起、たちまちに斑足王を幽閉し、王位をはく奪してしまいました。

全ての権力も財産も奪われた斑足は惨めにもマガダを囲むある山の中へと追放されました。

その山は凶暴なる鬼神ラークシャサつまり羅刹(らせつ)の集う恐るべき山。普通なら羅刹の餌食となるところでしょう。しかし、もともと人と獣との間に生れし異類婚の子であり、あまつさえ人肉を食らい続けた斑足は、羅刹たちにとっても特別な存在だったのです。

なんと羅刹たちから絶大な人望?を得た彼は羅刹の王としてこの山に君臨。さらには自分を廃位に追い込んだ千王たちへの復讐へと怒りの炎を燃やすこととなるのでした。

羅刹王となった斑足王とその恐るべき軍団が潜む山。そここそがグリグド・クータすなわち耆闍崛山、またの名を霊鷲山(りょうじゅせん)と申します…。

斑足王の復讐の顛末如何?王舎城建設の由来とは?次回無量義経の段その三。刮目して待て。

塩入幹丈

元霊断院主任

福岡県妙立寺前住職

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