日蓮聖人降誕800年
日蓮宗全国霊断師会連合会
法華経のお話 法華経のお話

#021
無量義経の段その三
(三)

究極の食材

お経の冒頭はいつも「如是我聞(にょぜがもん)」からはじまるもの。『無量義経』もまた、この「如是我聞」によって舞台の幕が開かれます。

その幕あきと共に最初に説かれること、それはお釈迦様がこのお経―無量義経―を説かれた舞台、場所はどこであったかということです。

その場所こそ、後にひかえる「妙法蓮華経」の舞台である、印度佛教史上屈指の有名スポット「王舎城(おうしゃじょう)・耆闍崛山(ぎじゃくっせん)」なのです。

如是我聞

王位についてからの斑足王は来る日も来る日も肉料理を要求し続けました。いかに大国の王室とはいえ畜産業もまだまだ未熟な大昔。ある日とうとう厨房に肉が切れる日が来てしまいました。

毎日肉料理を用意することは王の厳命。出せなかったら料理長の重大責任です。窮地に立たされた料理長は城外に飛び出し食材を求めます。

あてもなくさまよう彼がたまたま見つけたもの。それは生き倒れになっていた子供の遺体でした…。

恐ろしいことに料理長はその遺体を材料にして料理を作ってしまったのです。これだけでも充分に恐ろしいことですが、さらに恐ろしいことに斑足王はこの料理こそが究極のメニュー、至高の食材だと絶賛、これから毎日この料理を出すように命じてきたのです。

むろんそのような無茶ができるわけはありません。観念した料理長は王の前に進み出て正直に告白し赦しを求めました。今日の料理は人間の子供の肉で作りましたと…。

しかしうなだれる料理長に向かって告げられた斑足王の指令は驚愕すべきものでした。

「ならばこれより毎日、子供を一人ずつ攫ってきて料理せよ!」  まさにたった一度の過ちが転落の第一歩。栄えある王室の料理長は何と王直属の殺人マシーンを裏稼業とするはめになってしまったのです。

塩入幹丈

元霊断院主任

福岡県妙立寺前住職

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