日蓮聖人降誕800年
日蓮宗全国霊断師会連合会
法華経のお話 法華経のお話

#077
無量義経の段その三十五

大轉輪王小轉輪王。金輪銀輪諸轉輪王。(無量義経徳行品第一)

1.あなたたち地水火風空全てを演じないと駄目だと思っているようだけどそんな事はありません
(月影千草)

私たちの住むこの宇宙は、生物も無生物も皆、地・水・火・風・空の五つの要素、すなわち五大によって構成されています。

五大は地水火風空也。(乃至)法界広しと雖も此の五大を過ぎず也。

日蓮大聖人「御義口伝」
法華経のお話

ここで大事なことは、単に五大が構成するものは、私たち凡人の眼にする物質的な存在だけでなく、法界の全て、つまり凡人には目にできない霊的存在、神々やその住まいすらも含むということです。

五大即妙法蓮華経也。

日蓮大聖人「御義口伝
今阿仏上人の一身は地水火風空の五大なり。此五大は題目の五字也。

日蓮大聖人「阿佛坊御書」

見えるものと見えざるものからなる私たちの宇宙は、全てが五大を元素とするからこそ、その五大が五字の妙法蓮華経と変換されることで、私たち皆が佛となり、世界は浄土として顕現されるわけですね。

ちなみに空の代わりに金を配置したのが、東洋の占いで有名な五行です。

木より火生じ、火より土生じ、土より金生じ、金より水生ず。木の敵は金、金の敵は火、火の敵は水、水の敵は土、土の敵は木なり。

日蓮大聖人「戒法門」

こちらは元素というよりも、この宇宙内で起こる(見えるも見えないも)全ての現象を、五つのカテゴリーに分類したものと言うべきでしょうかね…?

2.君はあの菩提樹の下に「エトナのエムペドクレス」を論じ合つた二十年前を覚えてゐるであらう。僕はあの時代にはみづから神にしたい一人だつた
(芥川龍之介)

エムペドクレス

五大にしろ五行にしろ、どちらにも共通するのが地・水・火・風の四つ。

実は西洋の方では、この四つだけで万物が構成されていると長らく考えられてきました。

これがいわゆる四大元素説。提唱者は輪廻転生を説いた古代希臘(ギリシャ)の哲人にして、男たちだけの裸の祭典だった古代オリンピックの優勝者でもあったという、文武両道のエムペドクレス。

また、あの万学の祖(自然学、生物学から哲学に政治学、果ては文学と理系も文系もお構いなし)アリストテレス(あのマケドニアの英雄アレキサンダー大王の、若き日の家庭教師でもあったそうです)も、四大元素説を説いたそうです。

しかしあのアリストテレスをして、空を見落として四つに留まるわけですから、やはり佛教発祥の地、東洋の智慧あってこそ、空の存在が認識できたわけなんですね。

3.お前とアマノは一人一人では単なる火だが「火」二人合わされば炎となる
(オオタ・コウイチロウ)

そうは言っても、空は別として、五大でも四大でも特に重視されるのは火のようです。(だからこそ唯一神をエッサイム=燃え上がる炎の神よと、讃えるわけです)

唯一神に仕える天使軍団の最高位は熾(セ)天使(ラフ)ですが、そのセラフのリーダー格、いわば天使軍団のエリート中のエリートは、火の天使ミカエル、風の天使ラファエル、水の天使ガブリエル(聖母マリヤやイスラムのムハンマドの前に顕現した天使ですね)、地の天使ウリエルの四大天使。まさに四大元素を司る天使なわけですね。でもこの火・風・水・地を司る四人の実力者って、なんだか馴染み深いような気がしますね…。

※この記事は、教誌よろこび平成26年10月号に掲載された記事です。

イラスト 小川けんいち

塩入幹丈

元霊断院主任

福岡県妙立寺前住職

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