日蓮聖人降誕800年
日蓮宗全国霊断師会連合会
法華経のお話 法華経のお話

#059
無量義経の段その十七

大轉輪王小轉輪王。金輪銀輪諸轉輪王。(無量義経徳行品第一)

スタンフォード大学の遺伝学者

1.若者は老人が馬鹿だと推測するしかないが、老人は若者が馬鹿であることを経験で知っている

スタンフォード大学の遺伝学者によると、人類の知能の進化は二千年から六千年前にピークを迎え、以後は知的にも感情的にも劣る人間が増加しているのだそうです。

だからなんでしょうか?

「昔はよかった!」や「今の若いもんはなっとらん!」の嘆きは、いわば人類の歴史における定番のフレーズ。

古代アッシリア帝国(今のイラクあたりです)の石碑や、古代エジプト王朝の残したパピルス紙には、「今の若い者には困った!」と載っているとかいないとか…。

また、あの「プラトニック・ラブ」の語源(本人は妻帯者ですが)にして、アトランティス大陸伝説の言い出しっぺたる大哲学者プラトン(余談ながら、この方の本名はアリストクレス。実はプラトンとは、レスラーをしていた若き頃のあだ名だったそうです)も、「最近の若者は、何なんだ。このままだと、世の中どうなるんだ」と、弟子たちに愚痴っていたと伝えられています。

2.黄金時代が現代であったためしはない

そのプラトンのいたギリシアの神話によると、人間は黄金の種族から白銀の種族、そして青銅の種族(聖戦士ですな)と続いて来たと説きます。

ギリシャ神話

クロノス(土星です)を長とする、古き巨神と共にいた黄金の人類たちは、皆が長命で争いもなく、神々に等しい平和な時代だったとされています(いわゆる黄金時代というわけです)。

しかし、次の白銀の種族、さらに青銅の種族と代を重ねるほどに、人類のレベルは下げ止まりがない程に落ち込んでいき、ついには主神ゼウス(木星です)の怒りを買って、白銀の種族は地の底に沈められ、また青銅の種族は洪水に飲み込まれて滅ぼされたといいます。

その後、神々に近い英雄の時代になって、一時的に盛り返したのも束の間、今の鋼鉄の種族は、今まで以上に堕落した人間ばかりだと、ギリシア神話は説いています。

要するに、我々も必ず滅ぼされるんだよと教えているのですね。

3.我々の後に大洪水あれ

洪水で滅びる人類と言えば、あの有名な神話、ノアの方舟を思い出す方も多いことでしょう。

最初の男女アダムとエヴァ=イブ(イスラム教ではアーダムとその妻)から増えに増えた人類は、その数に反比例するかのように堕落の道をたどり、遂には唯一神に選ばれたノア(イスラム教ではヌーフ)の家族と、彼らが集めた雌雄ひと組の動物たちを残し、後の人類は地上の全生物ごと洪水で殲滅されたというお話です。

人類を滅ぼした後、唯一神は二度と洪水で人類を滅ぼさないと誓われ、虹を作ったと言われます(故に虹は神の証とされるそうです)。

ただしこれは、あくまでも洪水で滅ぼさないというだけのこと、結局は天使(使徒)たちによって、世界が滅ぼされる日(審判の日)が来ると信じることが、熱き砂漠から興った唯一神を崇める諸宗教の核心なのです。

そう、「世の中は悪い方に向かっていく」、あるいは「世界は滅亡に向かっている」という考え(下降史観とも言います)は、古代より綿々と人類が思い描いて来たことなんですね。

そして我らが佛教もまた、下降史観を重視するのです。

それがお馴染みの末法万年の時代、日蓮大聖人が末法の大導師たることは御存じの通りですね。

実はその末法が始まる直前、平安の世において、ある重用な使命をもって登場された方こそが、比叡山の伝教大師だったわけです。

はたしてその使命とは…。

イラスト 小川けんいち

塩入幹丈

元霊断院主任

福岡県妙立寺前住職

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