日蓮聖人降誕800年
日蓮宗全国霊断師会連合会
よろこび法話 よろこび法話

#020
物で栄えて心で滅ぶ

日蓮宗霊断師会 聖徒部 部員
千葉県柏市 妙照寺聖徒団団長
瀬川 観常

現在では一つの大型量販店でなんでも揃う!

食品・衣類・生活雑貨・美容室・車用品・などがあり、品数も豊富で安い!以前は、魚屋はこの店、肉屋はあっちの店といった感じでしたが、とても便利になり大変な賑わいで市民にとっては有難いものです。

しかし、ここ数年で某グループの大型スーパーが店舗を縮小しているというのです。

現在はインターネットの普及が進み、自宅に居ても何でも揃う便利さです。例えば洋服を買う時には試着をしたりして気に入れば購入する。そんな事が自宅で出来てしまいます。

まず欲しい洋服を注文する、同じ形の洋服でも違う色と、違うサイズの服も頼む。届くと自分の持っている服と組み合わせたりしながら気に入ったものだけを購入し、気に入らなかった物は送り返す!返送は無料で配の時間も早くて安い、このシステムが流行っており、これは新しい時代の象徴です。

物で栄えて心で滅ぶ

そんな中、お坊さんの配達?もあるといいます。インターネットで法事の予約をすれば三万五千円できてくれる!そんなシステムもあるようです。

現代は葬儀もしない、菩提寺を持たない、墓を持たない時代ですのでこういった需要もあるようです。

しかし、数年前に信じられないような出来事がありました。

通夜・葬儀が終わり、火葬場から帰ろうとした時の事です。ある女性から「お坊さんちょっとだけお話しさせてくれませんか?」と呼び止められました。女性は「お坊さんが故人につけたお戒名の意味を知り、大変勉強になりました」とおっしゃられました。

「実は私、お戒名をつけるアルバイトをしているんですけど、とても参考になりました」と・・・。

耳を疑った私はもう一度聞きなおしました。「お戒名をつけるアルバイトですか?」「そうです。」

「失礼ですがどちらかの僧侶の資格をもっている方ですか?」と尋ねると「いいえ、マンションに住んでいる普通の主婦です。」というのです。この誰もが驚くようなアルバイトは「知り合いがやってくれないか?」という事で始めたそうです。

二十四歳の時にはこんな経験もありました。

お通夜に行き、導師の控室が他の僧侶と一緒の場所でした。

先にご年配の貫禄のある他宗の僧侶がおられました。「失礼します、ご一緒させて頂きます」といって入ると「あんた随分と若いけど、どこから派遣されてきたの?」と言われました。

「当山のお檀家さんのお通夜です」すると「そんな若くて一人で出来るの?お坊さんの資格持ってるの?」と言われました。当然の如く資格をもっているから来ているのです。

その僧侶は立派な衣に身を包み、貫禄はあるものの、開式前には子供が読むような振り仮名つきの大きなお経本を広げておりました。

そして私にこう言ったのです。「この年になるとなかなか覚えられなくてね~!今日は何宗、今度は何宗、次は何宗なんて言われると困っちゃうよ~」と。

私はその僧侶こそ資格をもっていないのでは!と思いました。以前はこういう人が多かったと聞きますが、現在ではきちんと僧侶の資格を持っている人でないと派遣会社からは認められないようになったと聞きます。

物で栄えて心で滅ぶ

現実にはお寺の護持・維持管理が厳しくそういった派遣会社に登録をする僧侶も増えたようでありますが、ビジネスになっているような気も致します。

何故このような事になったのでしょう。

情報社会の世の中、「人に聞く」という事が減りました。インターネットで調べればわかるのです。

親子の会話、親戚の付き合い、近所の付き合いなど、こういった会話が減り、人と人の繋がりが薄くなってきた事と菩提寺を持たない人が多いために出来たビジネスだと思います。

当山のお檀家さんの中でも派遣会社に葬儀をお願いし「葬儀は済ませましたので埋葬だけさせて下さい」という方もいらっしゃいました。

まさに親子の会話不足から起きた事です。

日蓮大聖人は、

火は焼き照らすを以て行と為し、水は垢穢を浄むるを以て行と為し、風は塵埃を拂ふて行と為し、又人畜、草木の為に魂となるを以て行と為す。大地は草木を生ずるを以て行と為し、天は潤すを以て行と為す。妙法蓮華経の五字も又是の如し。

生死一大事血脈鈔

と、おっしゃられております。

マンションに暮らす主婦がお戒名をつけるアルバイトでは行と為さず、資格を持たない僧侶では行と為さず。これでは法の為にならないのでお布施が行にならないのです。親は子に先祖供養を託し伝える事が行の一つですし、聖徒の皆様の行は、?生神月守を通じて菩提寺を持たない人にお寺と縁を結ばせてあげる事も一つの行なのです。

先ずは縁ある方々をお寺に誘って一緒に心を学ぶことから始めてみてはいかがでしょうか。

イラスト 小川けんいち

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