日蓮聖人降誕800年
日蓮宗全国霊断師会連合会
日蓮大聖人が歩まれた道 日蓮大聖人が歩まれた道

#034

戒体即身成佛義かいたいそくしんじょうぶつぎ

第三法華開会の戒体者、仏因仏果の戒体也。(中略)此法華経は三乗・五乗・七方便・九法界の衆生を皆毘盧遮那の仏因と開会す

戒体即身成佛義
戒体即身成佛義

『戒体即身成佛義』は、蓮長(れんちょう)が鎌倉より清澄へ帰山して間もなくの仁治三(一二四二)年、御年二十一歳にて著述されたものです。以前にご紹介した『授決円多羅義集(じゅけつえんたらぎしゅう)』は、伝書として存在した書物の書写ですので、この『戒体即身成佛義』が大聖人の初めてお書きになった御書となります。蓮長がこれまでに学んだ学問の経緯、そしてその当時の理解を知る上でとても興味深い内容ですので、しばしその中身について触れてみたいと思います。

まずこの御書が誰に対して示されたものかは、残念ながら明らかではありません。あるいは師道善御坊に修学の成果を示す為に送呈したものか、またあるいは自身の胸の内を密かに書物として顕したものか・・・。いずれにせよ、この御書中で既に法然浄土宗の誤謬を正(ただ)す内容を含んでいますので、当時念佛信仰も盛んであった山内に騒ぎが起きた史実がないことを考えると、広く大衆に公開してはいないようです。

御書の大筋はその論題が示すとおり、「戒とはいかなるものか、そしてその戒によっていかに成佛を為すか」についての論述となります。戒はそれぞれ四段階に分別され、第一段に小乗戒、第二段に権大乗戒、第三段に法華開会の戒とそれぞれの特色を述べながら、順により上位の戒を示していきます。やはり法華経の戒については、本書中で最も文字数を割(さ)いていますが、興味深い点はそれを結論とはせず、第四段の真言の密教戒を最高位として位置づけているのです。

これは皆さんがご存じの日蓮大聖人のイメージを、大きく覆(くつがえ)すものではないでしょうか。この後に大聖人は痛烈なる真言宗批判に転じていきますが、この御書の内容を見れば、現時点ではまだまだその段階には至っていないことを示しています。それは蓮長が学問を修めていた当時の時流や、台密(天台密教)の教えが中心となっていた清澄の環境が、蓮長をして密教至上主義に至らしめていたものと考えられるのです。

「顕密二教(けんみつにきょう)」における真の「顕」と「密」とはいかなるものか、蓮長がその神髄を知るには、いまだ時を待たねばなりませんが、このお話の続きはまた次号にて。

イラスト 小川けんいち

※この記事は、教誌よろこび平成26年4月号に掲載された記事です。
小泉輝泰

小泉輝泰

宗会議員
霊断院教学部長

千葉県顕本寺住職

バイクをこよなく愛するイケメン先生

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