日蓮聖人降誕800年
日蓮宗全国霊断師会連合会
法華経のお話 法華経のお話

#045
無量義経の段その十一
(一)

東の王者は君だ!

大轉輪王小轉輪王。金輪銀輪諸輪之王。

無量義経徳行品第一

絶地(ぜっち)・翻羽(ほんう)・奔霄(ほんしょう)・越影(えつえい)・踰輝(ゆき)・超光(ちょうこう)・謄霧(とうむ)・挟翼(きょうよく)の八頭の神馬・穆王(ぼくおう)八駿を駆使し、黄河の大地を高速で駆け巡ったと伝えられる周の穆王。

震旦(しんたん)の人々にとって幻の山と噂された崑崙(こんろん)山すらも、八駿に牽かせる馬車に乗れば、あたかも隣近所に行くがごとし。

崑崙の地にて西王母(全ての女性仙人を司る大仙女)と面会したという穆王。

さらに彼は震旦の人々にとって崑崙山以上に謎の土地、はるか西方の印度、王舎城(おうしゃじょう)は霊鷲山(りょうじゅせん)へと八駿のコースを取るのでした…。

大転輪王、小転輪王、金輪、銀輪、諸輪之王の一人として、法華経説法の場に駆け付けた周の穆王。

この時にお釈迦様は、多数の転輪聖王(てんりんじょうおう)の中でも、特に印度からはるか遠く離れた東の地より訪れた穆王に、特に注目されたと伝えられます。

法華経は印度よりはるか遠く東にこそ、大いに縁ある故でしょう。

東方の転輪聖王こそが、やがて法華経に重要なる意味を持つ…。

故にお釈迦様は、法華経の経文より特に真の転輪聖王の証となるべき句を撰び、穆王のみに授けました。それこそが、

  • 「十方佛土中・唯有一乗法」(方便品第二)
  • 「観一切法・空如実相」(安楽行品第十四)
  • 「佛語実不虚・如医善方便」(如来寿量品第十六)
  • 「慈眼視衆生・福聚海無量」(観世音菩薩普門品第二十五)

の八句、四海領掌の偈(またの名を帝王の偈)です。

お釈迦様より直々の口伝を授けられた穆王は教えを深く胸に刻み、帰国した後、何人にも秘して明かさなかったといいます。そう、ある一つの事件が王宮に起きるまでは…。

イラスト 小川けんいち

塩入幹丈

元霊断院主任

福岡県妙立寺前住職

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