日蓮聖人降誕800年
日蓮宗全国霊断師会連合会
法華経のお話 法華経のお話

#037
無量義経の段その七
(三)

お釈迦様のお好みは「中」

「一時佛住。王舎城(おうしゃじょう)。耆闍崛山(ぎしゃくっせん)中」

佛様が居ます世ならば必ず説法の場所とされ、無佛の時代ならば聖者が修行の場とし、さらに聖者もいない世ならば鬼神や精霊が棲み家とする、聖も魔も訪れる霊地。

まさに善も悪も超え全てを救う法華経にとって、最もふさわしき舞台。それこそが王舎城(マガダ国首都)の丑寅(うしとら)にそびえし山、耆闍崛山すなわち霊鷲山(りょうじゅせん)だったのです・・・。

教科書の定番、宮澤賢治の「永訣の朝」の有名な一節

おまへがたべるこのふたわんのゆきにわたくしはいまこころからいのるどうかこれが兜率の天の食に変ってやがておまへとみんなとに聖い資糧をもたらすことを
お釈迦様のお好みは「中」

で兜率天(とそつてん)のことは皆さんもお馴染みでしょう。

兜率天とは六欲天(人の目には見えない天界のうち、地球に近い空間に存在する六つの天界のこと)の内、地球から四つ目に当たる天界のこと。あの弥勒菩薩が五十六億七千万年後に弥勒佛として地球に降臨されるまでの、最後の調整のため修行をされている処です。

実はお釈迦さまも印度に降臨されるまでは、ここ兜率天にて最終調整に励まれていました。

兜率天よりも地球に近い三つの天界には、まだまだ煩悩は多いけれど、佛教への信仰は篤い神々が住し、逆により遠い二つの天界には、レベルは高いけれども、佛教とは距離を置く神々が住しています。

その二派に別れる六欲天のちょうど中間にあたる故に、兜率天は別名、中天とも申します。

その中天からお釈迦様は、東洋と西洋の中間にあたる中国(この場合、漢民族の中国に非ず)の印度へ、中日(十時から十四時)に降臨され、煩悩まみれの王宮の生活からも、禁欲ばかりの苦行者の生活も離れた中道の修行で悟りを開かれ、最後は中夜(二十一時から一時)に涅槃(佛様がお亡くなりになられる)されました。

一生の大事な節目節目に中を現わすことで、お釈迦様は中道の教えたる佛教を私たちにお示しくださるのです。

故に最も大事なことを説かれる時も、まさに山の「中」にお入りになられるわけです。

塩入幹丈

元霊断院主任

福岡県妙立寺前住職

pagetop

TOP