日蓮聖人降誕800年
日蓮宗全国霊断師会連合会
法華経のお話 法華経のお話

#019
無量義経の段その三
(一)

その街の名は王舎城

お経の冒頭はいつも「如是我聞(にょぜがもん)」からはじまるもの。『無量義経』もまた、この「如是我聞」によって舞台の幕が開かれます。

その幕あきと共に最初に説かれること、それはお釈迦様がこのお経―無量義経―を説かれた舞台、場所はどこであったかということです。

その場所こそ、後にひかえる「妙法蓮華経」の舞台である、印度佛教史上屈指の有名スポット「王舎城(おうしゃじょう)・耆闍崛山(ぎじゃくっせん)」なのです。

印度北東はガンジス河の中流、現在はラージギールと呼ばれる地域に勃興した古代王朝・摩伽陀(マガダ)。その首都として栄えたのがラージャグリハ、すなわち王舎城です。

お釈迦様に教えを受ける前の、まだ悪鬼だったころの鬼子母神様が日々子供たちを襲っていた街がこの王舎城です。

また、あの提婆達多(だいばだった)にそそのかされた阿闍世王子(あじゃせおうじ)が父王を殺害し、母を幽閉したのもここ王舎城。印度佛教最初の寺院として有名な竹林精舎(ちくりんしょうじゃ)が建立されたのもここ王舎城。お釈迦様のお弟子として有名な舎利弗様や大迦葉様の出身地もここ王舎城。

王舎城こそ印度の佛教史上、もっとも有名な街だったわけです。

だからでしょう。「無量義経」そして「妙法蓮華経」の主要舞台もまた、ここ王舎城なのです。

かようにこの街が佛教と縁深い街となったのは、実はこの街の誕生自体が、そもそも佛教と深き因縁があったからだと伝えられます。その因縁とはすなわち、王舎城の名の由来となる王の伝説です。

塩入幹丈

元霊断院主任

福岡県妙立寺前住職

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