転輪王(または転輪聖王)といえば、あの日本SFの金字塔、光瀬龍の「百億の昼と千億の夜」(萩尾望都の漫画版も有名ですね)での主人公アシュラ王たちをバックアップする謎の超存在が有名でしょう。
あるいは八十年代の人気ドラマ「スケ番刑事?」でのラスボス、さらには「雲に乗る」「3×3eyes」「瑪羅門(ばらもん)の家族」等々と、サブカルの世界では頻繁に引用される、いわば隠れた常連キャラ。
人気の原因は、やはりその名前が与えるイメージ、ニュアンスが大きいでしょう。
さらには世を総(す)べるという、その属性も忘れるわけにはいきません。
そうです。転輪聖王こそは天下を真に総べる者たち。
その身体には本来、佛様だけが具える三十二の大きな特徴と八十の小さな特徴を全て具え(と、いうことは佛様同様に、その身は金色の光を放つ者!)、その手には真のリーダーの証たるチャクラム(一般的な佛教関係のマークとしてお馴染みの法輪。実はこれ、円盤状の刃物で投げて攻撃する武器、いわゆるFFでお馴染みの円月輪(えんげつりん)なのです)が握られているといいます。
このチャクラムが鉄で出来ているのを鉄輪といい、鉄輪を持つ転輪王を別名、鉄輪王といいます。
鉄輪王は転輪聖王の中では最もレベルが低いとされますが、それでも大陸一つを征服する程の実力を有するそうです。
鉄輪王の一ランク上がブロンズのチャクラム銅輪を使う銅輪王。大陸二つを統一する力を有します。
さらにレベルアップしたのがシルバーのチャクラム銀輪の使い手、銀輪王。大陸三つをも統一する実力者です。
そして最強のチャクラム、ゴールドで作られた金輪を持つ者こそが、真の転輪聖王と言うべき金輪王。
三千年に一度しか咲かぬと伝えられる伝説の花、優曇華(うどんげ)。その花が咲き乱れる時こそが、金輪王の立ち上がる時!

あの、マケドニアの英雄アレキサンダーが、モンゴルの勇者チンギス・カーンが、コルシカ島の怪物ナポレオンが、そしてナチス・ドイツの悪の天才ヒトラーが夢みて果たしえなかった悲願、俗世間における人類最大の野望、世界征服を実現しうる唯一の男なのです…。
実はお釈迦様が赤ちゃんだった頃、その人相を占った阿私陀(あしだ)仙人は、「この方こそは、もしご出家されたら世を救う佛陀となられ、また王位をお継ぎになられたら、地上を総べる転輪聖王となられることでしょう…」
と予言されたと伝えられます。史上唯一、佛となられたお釈迦様ならばこそ、もしお城に留まられていたならば、必ずや金輪王となられたことでしょう。結果はご存知の通り、お釈迦様はご出家の道をお選びになられ、金輪王の印度出現は幻となりました…。
この法華の座に参じた金輪王もまた、はたして何処の国より来られたかは、今となっては謎のベールに包まれた幻の存在です。
されど、この場の転輪王たち皆が謎の存在だったわけではありません。
金輪王には及ばずといえども、転輪聖王の一角として、後にその名を讃えられた、歴史上の王も存在しています。
その王は印度をはるか離れた東の地、震旦(しんたん)は周の王者穆(ぼく)王(おう)と申します…。
イラスト 小川けんいち


