日蓮聖人降誕800年
日蓮宗全国霊断師会連合会
よろこび法話 よろこび法話

#083
『名前の持つパワー』
~呼ぶだけで元気が出る~

東京都八王子市 日朝寺光明聖徒団団長
尾崎妙翠

人にとって「自分の名前」というのは、とても特別で大切なものですよね。

道を歩いていて「あのー」とか「スミマセンー」と呼びかけられても、誰の事だか分からず素通りしちゃうかもしれません。ですが「妙翠さん」って名前で呼ばれたらすぐに気が付くことが出来ます。また、病院の待合室などでも、大勢の人がその場にいたり、本を読んだりしていて意識がそちらに向いていない時にも、不思議な事に看護師さんに「尾崎妙翠さーん」って呼ばれたらハッと「私だ、次の番だ」って気が付くことが出来ますね。自分の名前を呼ばれるという事は、とても特別ですごい力があるのだなぁと感じます。

『名前の持つパワー』~呼ぶだけで元気が出る~

さてわたくしは、お坊さんになることを志し、六年ほど前に現在の「妙翠」という名前に改名致しました。生まれた時に両親が私に付けてくれた名前は「緑(みどり)」です。師父である文英上人は、私の事を小さいころ「みどり君」と呼んでいました。家にいる時、たまにどこからか「みどりくーん」って父の声が聞こえてくるので、声のする方に行ってみて「なぁに?今呼んだ?」って聞くと「あぁ、用事がある訳じゃなくて、ちょっと呼んだだけだよ、呼ぶとね元気が出るんだよね」と言われました。「へんなのー」と子供の私は思っていましたが、今よく考えてみますと私の名前を呼んだだけで元気を出して貰えるなんて、嬉しくて、とても幸せだったのだなぁと思います。

若い恋人同士は、お互いの名前を呼び合うだけで愛を確かめ合うことが出来るし、高校生の時に河原で「○○ちゃーん好きだー」と好きな女の子の名前を叫んだ!なんていう青春時代の話を聞いたこともあります。そう考えるとこの「名前を呼ぶ」ことに含まれるパワーは「愛」なのかもしれませんね。

さて、いつも皆さんが声に出して呼んでいる名前は、誰の名前ですか?お子さんの名前?旦那さんの名前?ペットの名前を一番多く呼んでいるわっていう方もいるかもしれません。生活の中で、「お父さんご飯だよ~」とか、「○○ちゃんもう起きなさ―い」とか。名前を呼びますよね、実はこうした日常の中で名前を呼ぶことからも、私たちは、そこに含まれる「愛のパワー」を受けています。だって独りじゃないってことですから、とても有難いです。では、お家に一人の人はどうしよう?毎日お仏壇のお茶やお水を変える時、名前呼びましょうよ。声に出して呼びましょう。たぶん、皆さんすでにやっていると思います。

私も毎日、仏壇で師父のお位牌と写真に向かって「お父さーん、おはよう。お水取り替えます」と話しかけます。

そうすると、返事が返ってくるのです。「おとうさーん」って言うと「みどりくーん」って返ってきます。これは、いつでも、何回でも呼べば必ず!私の心の中に響いてきます。

「おとうさーん」
「みどりくーん」

それだけで、私も、元気が湧いてくるんです。父が昔言っていた「名前を呼ぶだけで元気が出る」という意味が、今になって私の心に響いています。

妙法蓮華経とは我等衆生の仏性と梵王・帝釈等の仏性と舎利弗・目連等の仏性と文殊・弥勒等の仏性と、三世の諸仏の妙法と、一体不二なる理を妙法蓮華経と名けたる也。

法華初心成仏抄

私たちは誰もが心に「仏性」を持っています。この私たちの「仏性」が、大曼荼羅ご本尊に書かれているような名だたる神仏たちの「仏性」と全く同じだというのです。また、仏様の「悟りの心理」と全く同じだとおっしゃっています。そしてそれらを「妙法蓮華経」と名付けられたのです。

私たちが毎日「南無妙法蓮華経」とお唱えする事は、自分や神仏の「仏性の名前」を呼び起こしていることになります。「南無妙法蓮華経」とお唱えする度に、仏さまの「悟りの心理の名前」を繰り返し、呼んでいることになります。

『名前の持つパワー』~呼ぶだけで元気が出る~

だから、私たちはこの「南無妙法蓮華経」という名前を呼ぶだけで、その名前の持つパワーで、元気がいただけるのですね。いつでも「南無妙法蓮華経」と呼びかけましょう。必ずあなたの心の中に返事が響いてきます。名前を呼ぶだけで、元気が湧いてきます。

これからも皆さまが共に「南無妙法蓮華経」と唱え、元気な心でいられますように。また大切な方とお互いの名前をたくさん呼び合えますように。ご祈念いたしております。

※この記事は、教誌よろこび令和4年4月号に掲載された記事です。

イラスト 小川けんいち

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