日蓮聖人降誕800年
日蓮宗全国霊断師会連合会
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#072
『九識霊断法は人生の灯明』
~御本佛様にすがり、御題目を杖として~

日蓮宗霊断師会連合会霊断院副院長
栃木県さくら市 妙福寺聖徒団団長
野澤壯監

小島かおりさん(仮名)が「九識霊断法」と出会ってから、もうすぐ十年になります。

当時、かおりさんは結婚八年目。大恋愛の末に結ばれた公務員の夫と二人暮らしで夫婦仲も良く、自らは営業関係の仕事に就いて充実した幸せな生活を送っていました。

ただ一つ、自然の成り行きに任せていながら、子どもが出来る気配がまったく無いことが気がかりでしたが、仕事の面白さと忙しさに紛れ、さほど気にも留めること無く、これまで過ごして来たのでした。

三十代後半を迎え、かおりさんはいよいよ子どもを産みたいと思い、自分なりに勉強しながら、いわゆる妊活に勤しむようになりました。しかし、しばらくしても妊娠の兆候は表れず、さすがに不安な気持ちが、心の中で首をもたげて来ました。

夫と相談の上、産婦人科の診察を受けた結果、かおりさんの母胎に異常があり、医療の力を借りなければ妊娠することがとても困難であることが判明しました。かおりさんにとって、自分たち夫婦の子どもを産むことが出来ないという事実は、夫への深い愛情と相俟ってあまりに大きな衝撃でした。

『九識霊断法は人生の灯明』~御本佛様にすがり、御題目を杖として~

明るさが取り柄のようなかおりさんが、暗く落ち込む姿を見て「無理に子どもをもうけなくても、二人で幸せな生き方を考えていこう」と、夫がかけてくれる言葉も、その優しさが、かおりさんにとっては逆に辛く感じてしまうのでした。

夫の両親も、元々「早く孫の顔が見たい」などと言う人たちではなく、事情を知ってからはさらに気遣ってくれるようになりましたが、その気遣いが煩わしく感じられてしまい、義理の妹の二人の子どもたちに対しても、これまでと違って素直に可愛がってあげられない自分が嫌になることもしばしばでした。

このままではいけないと、気持ちを紛らわすように仕事に打ち込んでみましたが、かおりさんの心が晴れることはありません。

夫婦で話し合いを重ね、かおりさんは、お医者様の勧めに従い、人工授精の道を選ぶことにしました。人工授精は、薬の副作用や心身に及ぶストレスは想像以上で、これまで体験したことの無い辛いものでしたが、夫の思いやりと優しさに励まされながら、歯を食いしばるように頑張って、二度挑戦したのですが、いずれも無事に妊娠にいたることは出来ませんでした。

かおりさんがあまりに打ちひしがれるのを見て、実家の母親が殊の外心配して、当山の古くからの聖徒である知人を通じて相談にいらっしゃったのが、思えばかおりさんの御本佛様との結縁でした。

母親に伴われたかおりさんは、傍目にも疲れ果てた様子でした。「お医者様からは、二度頑張ったのだから、ここであきらめずにもう一度挑戦することを勧められています。協力してくれている夫のためにも、挑戦したい気持ちはあります。でも、心身ともに疲れ果ててしまい、もう耐えられそうにありません。自分ではどうしたら良いのか分からないので、今日こちらで観ていただいて、子どもを授かることが出来るのならば、もう一度だけ挑戦してみたいと思います」とのことでした。

早速、御本佛様・倶生神様に至心に法華経と御題目の祈りを捧げ、三度目の人工授精が成功して子宝に恵まれることが出来るかを霊断いたしました。

御本佛様・倶生神様からの御教示は、かおりさん夫妻には子宝に恵まれる運がそなわっており、心と体を整えて半年後に挑戦すれば、大いに妊娠の可能性があるというものでした。そして、座して幸運を待つのではなく、夫婦で真剣に祈りを捧げることが不可欠とのお導きをいただきました。

霊断の御教示に希望を見い出したかおりさんは、夫とともに俱生神様の月守を身に着け、それから毎月夫婦揃って御祈祷を受けに来ることになりました。今度こそ成功して子宝に恵まれるよう、二人は心を一つにして必死に祈り、御題目を唱えていました。

半年後、さらに詳細に霊断を行い、かおりさんの最後の挑戦が始まりました。その間も毎月の御祈祷は続きました。御本佛様の御加護を信じ、御題目に必死にすがり、夫の手厚い支えがあり、かおりさんは辛い日々を耐え抜くことが出来たのでした。

やがて、必死の努力と祈りが実を結び、三度目の挑戦で、遂に妊娠することが出来ました。かおりさんは感涙にむせびながら電話で報告してくれました。

周囲が皆で大喜びする中、これからさらに慎重を期すようにと釘を刺し、今度は安産成就の御祈祷を行いました。毎月夫婦で参詣し御祈祷を受けながら、かおりさんは初めてのつわりを体験し、お腹が少しずつ大きくなっていくことを実感しつつ、子どもを持つよろこびを噛みしめているようでした。

無事に月日はめぐり、可愛らしい女の子が産まれました。お医者様も驚くほどの安産でした。大きな感激の中、信仰の素晴らしさを体験した小島かおりさん夫婦は、御題目の聖徒となりました。日蓮大聖人様は、

法華経を信ずる人は冬の如し、冬は必ず春となる。いまだ昔よりきかず、みず、冬の秋とかえれることを。いまだきかず法華経を信ずる人の凡夫なることを。

妙一尼御前御消息

とお示しです。法華経・御題目の信仰に勤しむ人には必ず御本佛様の御加護があり、季節が寒く冷たい冬から必ず明るく暖かな春に巡っていくように、困難があっても乗り越えて、自分に相応しい幸せをつかむことが出来るのだよと信仰を鼓舞しておられるのです。まさに、小島かおりさん夫妻も、つらさに耐え懸命に人工授精に挑みながらも、努力が報われない冬の状態から、九識霊断法によって光明を見い出し、夫婦力を合わせて勤しんだ御題目の信仰によって、明るい春を手繰り寄せることが出来たのでした。

『九識霊断法は人生の灯明』~御本佛様にすがり、御題目を杖として~

あれから約十年の月日が流れましたが、毎月必ず家族三人でお参りし、月守を交換していかれます。そして、仕事のこと、育児のこと、娘さんの教育のこと、家の新築のこと等、日常のあらゆることを九識霊断法によって御本佛様に御教示を仰ぎ、しっかりと地に足の着いた人生を家族一緒に過ごしています。

今、世の中はコロナ禍により先の見通しが立たず、暗く不安な雲に覆われています。しかし、こんな時だからこそ、私たちには九識霊断法があることを思い出し、どんなことでも各寺院・教会・結社の霊断師に相談され、闇の中に光明を見い出し、閉ざされた道を信仰によって切り開いて欲しいと思います。御本佛様が見守っていて下さること、倶生神様が常に寄り添っていて下さることを忘れてしまってはいけません。御題目にすがることで、必ず自分に相応しい人生に導かれることを信じて、たゆまず、投げやりにならず、粘り強く困難を乗り越えていきましょう。

※この記事は、教誌よろこび令和3年5月号に掲載された記事です。

イラスト 小川けんいち

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