日蓮聖人降誕800年
日蓮宗全国霊断師会連合会
よろこび法話 よろこび法話

#071
お題目でよろこびの世界に

栃木県佐野市
本山 妙顕寺聖徒団団長
元日蓮宗霊断師会連合会霊断院院長
齊藤日軌

この世は冒険に充ちた交通事故や病気などの危険がいっぱいの世界です。地震や洪水コロナウイルスなど明日の我が身はどうなるか分かりません。アメリカのジョンズ・ホプキンス大学のまとめによりますと、新型コロナウイルスの感染が確認された人は、日本時間一月二十四日時点で世界全体で九,八四二万四,九四〇人となりました。亡くなった人は世界全体では二一一万三,三七五人となっています。

お題目でよろこびの世界に

法華経・譬喩品第三に三界火宅という言葉があります。意味はこの私たちの世界が、炎に包まれた家のように 危険に満ちた苦悩の世界であることをあらわしています。

「ある町に、多くの子供のいる大長者が古い大きな家に住んでいました。ある日、家が火事になり、長者はかろうじて家の外に出ることが出来たが、子供たちは火事に気が付かず、燃えさかる家の中で遊んでいます。長者は、子供たちが欲しがっていた乗り物があるよ、早く外に出てきて受け取りなさい、と子供たちを外に誘い、無事に子供たちを救出することができました。」

この譬えは、危険に満ちた世界に住んでいることを知らない人類を救い出そうとした、お釈迦さんのみ教えです。三界は、衆生が生死を繰り返しながら輪廻する世界です。火宅は、危険や苦しみ煩悩に満ちた人間世界を、燃えさかる古い大きな家に喩えています。父である長者はお釈迦様です。子供たちは、この世界がどのようなものなのかを知らない私たちです。燃えさかる火は、そのまま人間の心の煩悩の火です。私たちの父である本仏釈尊は、煩悩の火を吹き消し、苦悩の輪廻から解脱し悟りの境地に入るよう、いつも私たちを導いています。

このことを日蓮聖人は、観心本尊抄に次のようにお示しです。

今本時の娑婆世界は、三災を離れ四劫を出(い)でたる常住の浄土なり。仏すでに過去にも滅せず、未来にも生ぜず、所化(しょけ)以て同体なり。これ即ち己心の三千具足、三種の世間なり

観心本尊抄

日蓮聖人は、私たちがお題目の信心により本仏釈尊の御心と一体になれば、煩悩の火も消えて、心に浄仏国土が出現するとお説きです。さらにお題目を唱えていくと自分の身の回りが浄土と成り、家庭が浄土と成り、社会国家、世界が浄土となります。もちろんコロナウイルスも消滅します。

法華経には「衆生所遊楽」という言葉がございます。法華経『如来寿量品第十六』にある文で、「衆生の遊楽する所」とお読みします。これは私たちの住むこの世界は、実は本来仏さまの国であり、常寂光土であり、苦悩と悲哀のこの三界火宅と言われる現実社会こそ、人々が遊び楽しむ所だという意味です。

日蓮聖人は四條金吾殿へのお手紙に、たとえ辛いことがあっても奥さんと共に南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経と唱えなさい。すべてが楽しみに変わるでしょう、とお説きです。

一切衆生 南無妙法蓮華経と唱るより外の遊楽なきなり。経云衆生所遊楽云云。(中略)ただ世間の留難来るとも、とりあへ給べからず。賢人聖人も此事はのがれず。ただ女房と酒うちのみて、南無妙法蓮華経ととなへ給へ。苦をば苦とさとり、楽をば楽とひらき、苦楽ともに思合て、南無妙法蓮華経とうちとなへゐ(唱居)させ給へ。これあに自受法楽にあらずや。いよいよ強盛の信力をいたし給へ。

四條金吾殿御返事
お題目でよろこびの世界に

いつお迎えが来てあの世の浄土に返らなければならないか分かりません。この世一寸先は闇ですね。この危険でいっぱいの娑婆世界で、安心してよろこびいっぱい楽しく暮らすために、御本仏様は倶生神月守というお守りを授けてくれました。私たちはこのお守りを身につけて、南無妙法蓮華経と唱え日々倶生神様にお願いすれば、安全に暮らすことが出来ます。このような世界の仕組みの本当の意味が分かってきますと、だんだん苦しみや悲しみが少なくなって参ります。お題目でよろこびの世界になるのです。

※この記事は、教誌よろこび令和3年4月号に掲載された記事です。

イラスト 小川けんいち

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