日蓮聖人降誕800年
日蓮宗全国霊断師会連合会
よろこび法話 よろこび法話

#070
救われた後に目指す方向は?

埼玉県川口市
實相寺聖徒団団長
日蓮宗全国霊断師会連合会副会長
日蓮宗 宗会議員
松永慈弘

實相寺が毎年主催している、小学生を対象とした一泊二日の修養道場のお手伝いを、当山聖徒のAさんにお願いしていました。しかし、修養道場直前に受けた乳癌検診でAさんの身体に乳がんが発見されました。私は、「今回のお手伝いは無理をせず身体を休めてください」とお伝えしましたが、Aさんは「体に痛みは無く、修養道場の後に切除する手術の日程も決まっています。家に居ても気が滅入ってしまいますので是非参加させてください」と、お願いを含めた返答をされました。悩みましたが、スタッフと話し合い無理をしない形で手伝って頂くことになりました。

Aさんは元々信心堅固な方で、修養道場中はムードメーカーとして明るく振舞い、積極的に手伝ってくださいます。小学生たちが屋外で活動している時間は、本堂でひたすらお題目を唱えて「病即消滅」を祈っていました。

無事に修養道場を努め上げた後も、倶生神月守を胸に持ち一心にお題目を唱え続けました。それは毎日毎日続きました。ひと月が経ち切除手術直前の検査を受けに行った時の事です。なんと医師に「不思議なことに癌の腫瘍がきれいさっぱり消えています」と言われたのです。修養道場前に二回も検査して、Aさんも写真で見て確かに癌はあったはずですが、何度確認してもどこにも見当たりません。医師も驚き本人も驚き、その報告を受けた私も驚いてしまいました。

本当に有難い御守護を頂戴致しました。

救われた後に目指す方向は?

日蓮大聖人様は、

「法華経は女人の御ためには、暗きにともしび(灯)、海に船、おそろしき所にはまほり(守り)となるべきよし、ちか(誓)はせ給へり」

乙御前御消息

法華経は特に女性の為に、様々な形でご守護が現れると、ご教示されています。

救われた後に目指す方向は?

Aさんの信心の堅固さ、日々の菩薩行の功徳により、不思議なことに病が消滅したのでありました。それから半年ほど経過し、私はAさんから質問を受けました。「お上人、私はおかげさまで癌が消えて、それ以来は健康で、その頃抱えていた家庭の悩みも消え、今は本当に幸せです。心から感謝しております。しかし仏教においては心の境地が上がるといったものがあると聞くのですが、その様なことは日蓮宗でもあるのでしょうか」と尋ねられました。

日蓮宗の教学書『宗義大綱読本』には、

「当初はご利益信心であっても、次第に淘汰され教化されて、純真に信仰者として、本来の仏道へ入って行くことができればよいのである」と書かれています。

また日蓮大聖人様は、

「病によりて道心はおこり候か」

妙心尼御前御返事

と、お教示でございます。当初は病が治癒し、悩み事が解決する等のご利益により、お題目のすばらしさ、御本仏様の存在、何らかの目に見えない大いなる力が働いていることを実感するのです。しかし、その感覚で止まるのではなく、大聖人が求め、目指されていたのは、さらにその奥にある「仏 国土顕現」なのです。

死後の世界で幸せになるのではなく、生きている間に、今の世界を仏国土、すなわち霊山浄土という仏の世界へとつくり変え、生きている人が幸せな人生を送れるようにするという大目標があるのです。

どうか皆さん、共に倶生神月守を着帯し共にお題目を唱え共に「仏国土顕現」を目指してまいりましょう。

※この記事は、教誌よろこび令和3年3月号に掲載された記事です。

イラスト 小川けんいち

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