日蓮聖人降誕800年
日蓮宗全国霊断師会連合会
よろこび法話 よろこび法話

#064
ふたりで決めた合言葉

愛知県名古屋市 本覚寺聖徒団副団長
霊断院総務部総務課長
伊藤秀温

当山にお参りに来られた四十代夫婦のお話です。二人は学生時代から交際し、三十歳で結婚。飲食店で働いていた旦那さんは、三十三歳で自分のお店を出しました。夢にまで見た出店に夫婦揃って喜びました。開店間もなく、今度は奥さんが妊娠、出産。二重の喜びが夫婦に舞い込みました。旦那さんは仕事に一層気持ちが入り、奥さんは子育てに励む毎日です。奥さんは初めての子育てに四苦八苦。ミルクをあげて、おむつを替えて、泣き止むまで抱っこして、かわいい我が子のためにと頑張ります。ところが、なかなかミルクを飲まず、寝かしつけてもすぐ起きる。一度泣き出すと、どれだけあやしても泣き止みません。何か病気ではないかと心配した奥さんは、病院に相談すると、「順調に成長していますよ。この子の個性ですよ」との返答でした。しかし「順調に育っていると言われても、どうしてずっと泣いているの」と、奥さんはさらなる不安に追い込まれました。その頃に知人の紹介で当山へ相談に来られました。

お話を伺い九識霊断法を行うと、子どもの成長は医師の言う通り順調。しかし、夫婦の間に大きな溝が見られました。詳しく伺うと、旦那さんは家族を幸せにすると言って仕事に打ち込み、朝から晩までずっと仕事。奥さんは子どものことで手一杯。夫婦の生活リズムはバラバラに。話し相手が家にいない奥さんは旦那さんに大きな不満を抱き、旦那さんは不満ばかり口にする奥さんにイライラしていました。口を開けば言い合いになり、会話もどんどんなくなりました。

ふたりで決めた合言葉
ただ女房と酒うちのみて、南無妙法蓮華経ととなへ給へ。苦をば苦とさとり、楽をば楽とひらき、苦楽ともに思合て、南無妙法蓮華経とうちとなへゐさせ給へ。これあに自受法楽にあらずや。

四条金吾殿御返事

旦那さんは家族を幸せにするために働き、奥さんは子どもを一生懸命に育てています。お互い家族の幸せを願っているのにどうしてこうなってしまうのでしょうか。夫婦がともに苦楽を共にした先に幸せがあると大聖人はお示しになります。

「あなたの幸せは、私の幸せ。あなたの苦しみは、私の苦しみ」
これは結婚する時にふたりで決めた合言葉です。二人はすっかり忘れていました。家族のためと言いながら、いつしか自分のことしか見えなくなっていました。二人でしっかり話し合い、もう一度やり直すことを仏さまの前で約束しました。旦那さんが夢にまで見たお店にかける想い、子育てで悩む奥さんの気持ち。それぞれ分かち合うことで夫婦が落ち着き、子どもみるみるうちに落ち着いていきました。両親の心の乱れを子どもは敏感に感じていたのです。九識霊断法によって家庭に明るい光が差し込まれました。

今では家族三人、お店に家庭に生き生きと過ごしています。お題目が家族三人の合言葉、毎月の盛運祈願会は家族を見つめなおす時間です、と仰います。お子さんも元気に太鼓を叩いています。

お互いを思いやる気持ち、共感する気持ちで、家族の表情はこんなにも変わるのだと信仰の素晴らしさを実感しました。家族、夫婦のあり方を、仏様・大聖人様は教えてくださっています。

ふたりで決めた合言葉
※この記事は、教誌よろこび令和2年9月号に掲載された記事です。

イラスト 小川けんいち

pagetop

TOP