日蓮聖人降誕800年
日蓮宗全国霊断師会連合会
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#053
御題目信仰の相続

神奈川県本典寺聖徒団副団長・霊断院講師
戸田雅子

今年一月、市川海老蔵さんが十三代目市川團十郎、息子の堀越勸玄君が八代目市川新之助を来年の五月に襲名するとの披露会見がありました。襲名とは衣を重ねると云う意味であり、先代より一層大きな役者にとの思いがあります。歌舞伎界では長きに亘り名跡と芸が、その時代を生きた役者に依って受け継がれて来ました。

御題目信仰の相続

私達の御題目の信仰も七六〇余年の昔から、その時代を御題目と共に生きた人々に依って連綿と繋がれて来ました。御釈迦様が説かれた法華経は宇宙の真理、真実が説かれた経典です。その法華経の真髄である、南無妙法蓮華経の御題目を、日蓮大聖人が私達に教え、伝えて下さいました。現在は、その御題目の功徳を『九識霊断法』『倶生神月守』によって私達は具体的に受け取ることが出来ます。

苦労には二種類あって、しなくてもいい苦労と自分の成長の為に越えなければならない苦労があります。九識霊断法に従えば、しなくてもいい苦労はせずに済みます。それでも来る苦労は自分の成長の為に必要な苦労と受け止め、御題目の祈りで乗り越えていきます。私達はこの世に生まれて来る時に倶生神様と共に生まれて来ます。その倶生神様との絆が倶生神月守です。御本佛様の御守護は倶生神様を通じて届きますので倶生神月守の着帯が大切です。

御題目信仰の相続

我が家でも子供も孫も幼い頃より着帯しています。次男が小学校三年生の時の事でした。朝、学校に向かって家を出てしばらくすると、電話が鳴り「戸田さんのお宅ですか?実は私のバイクとお子さんが衝突して」と、バイクを運転されていた方からの電話でした。言われた場所に慌てて駆けつけると、細い道の端に倶生神月守を両手に挟み下を向いている次男がいました。「どうしたの、大丈夫」と声を掛けると、見上げた目には涙がいっぱいでした。話を聞くと友人が先に渡りつられて道路に飛び出した次男が、バイクと衝突したとのことでした。幸いにして、バイクのスピードがあまり出ていなかったこと、真冬だったので厚手の上着と長ズボンと毛糸の帽子、ぶつかった衝撃でバイクに乗り上げたものの道路脇の芝生の上に振り落とされたこと、ランドセルを背負っていたこと等の幸運が重なり擦り傷だけで済みました。

念の為、病院で検査を受ける事になり次男を車に乗せ、「さっき御守りを手に挟んで何をしていたの?」と尋ねると、「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経と言っていたんだよ。バイクのおじさんにも僕が悪いんです。ごめんなさい。ごめんない。と謝ったよ」と言われ、涙が止まりませんでした。

「でも、御守りをつけているのになんで事故にあったんだろう?」と言う次男に「それはね、道路に飛び出すような事をしているといつか大変な事になるよ。と仏様が教えてくれたんじゃないかな」と話しました。倶生神月守を着帯し御題目の信仰によって幼い頃に助けてもらった体験は生涯の宝物となる事でしょう。

須く心を一にして南無妙法蓮華経と我も唱へ、他をも勧んのみこそ、今生人界の思出なるべき。南無妙法蓮華経南無妙法蓮華経

持妙法華問答抄

私達は仏様の世界にいつか帰る時、今世での御題目の信仰、どれだけ周りの人に優しく出来たか、それを宝として持って帰ります。「生々世々値遇し頂戴せん」と開経偈に書かれている様に、何度生まれ変わっても御題目の信仰を持ちますと誓って出会った今世の御題目です。

しっかりと倶生神月守を着帯し、人にも勧め、御題目の信仰生活を楽しんで参りましょう。

※この記事は、教誌よろこび令和元年8月号に掲載された記事です。

イラスト 小川けんいち

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