日蓮聖人降誕800年
日蓮宗全国霊断師会連合会
よろこび法話 よろこび法話

#044
四苦八苦する
~苦しみからの感謝~

愛知県本住寺聖徒団
永田 智瑛

「四苦八苦する」とは「非常に苦労すること」という意味の四字熟語とされています。仏教において「四苦」とは、生まれ、老い、病み、死するという四種類の苦しみです。そこに苦手な人と相対しなければならない怨憎会苦おんぞうえく・愛する人と別れなければならない愛別離苦あいべつりく・求めるものが手に入らない求不得ぐふとくく・私たちの身の周りから沸き起こる身体と心の苦しみ五蘊盛苦ごうんじょうくの四つの苦しみが加わります。後者の四種類は普段の生活の中で、私たちが最も身近に「苦しいな」と感じる所です。そしていつもと違う状況、特に病に伏したとき、非常に「苦しい」と我々は感じてしまいます。

ある月の月回向の日程を変えて頂こうと、聖徒さんにお電話を入れた時のことです。開口一番、「昨日からどうも母の体調が芳しくなく、こちらもちょうどお参りの変更をお願いしようと思っていたのです」と息子さんがお話を始められました。聖徒のIさんは、とても信仰熱心な方で、お参りに伺った時は読経・唱題を大きな声で行う方です。

「どうされましたか?」と尋ねると、数日前より腹部の痛みを訴え、病院で検査したところ、深刻な腸閉塞を発症しており、更に大腸がんという診断結果でした。そこで私は「祈願札を御宝前に安置して、更に撫でてお祈りする撫で守を作って祈願させて頂きますので、明日になってお参りできそうならご連絡ください」とお伝えし電話を終えました。

聖徒さんからお手紙を頂いて

翌日、連絡が入り「不思議と昨日の電話の後、母の便が出ました。調子も良くなってきていますので予定通りお参りして下さい」とのことでした。病状を知るためIさん宅のお仏壇の前にて霊断を致しました。そして当病平癒の御祈祷、お題目の神秘に触れ、苦しくて起き上がれなかったIさんから笑顔が見られるまで回復したのです。日頃からの信心強盛な姿勢と何とか回復して欲しいという家族の強い思いが壽量御本仏様や諸天善神へ通じた瞬間であると感じずにはいられませんでした。

『妙法蓮華経譬喩品ひゆほん第三』の中に

常に生老の憂患うげんあり。かくの如きの火、熾然しねんとしてまず

という一節があります。これは法華経の中にある譬え話「三車火宅の譬え」の一節です。生老病死の苦しみを火と表現して、それが世の中では絶えることなく盛んに燃え上がっていることを説いています。この業火は最後、法華経の教えで消火され、世の中の人々は教えを受けて救われることになります。幾度となく苦難を乗り越えられてきたIさんは、絶えることのない苦しみの火を法華経・お題目による神秘の力を信じ、信行に励まれた結果、「また生かさせて頂いた。ありがとうございます」と言う言葉に繋げることが出来たのです。痛みに耐え、不安に押し潰されそうな状況にあったにも関わらず、Iさんは感謝の気持ちを言葉にされました。Iさんは落ち着き、穏やかな「臨終正念」の地にたどり着いていたのであります。

日蓮大聖人は『妙法尼御前御返事』に

夫以それおもんみれば日蓮幼少の時より仏法を学び候しが念願すらく、人の寿命いのちは無常也。出るいきは入るいきを待つ事なし。風の前の露、尚譬なおたとえにあらず。かしこきも、はかなきも、老いたるも、若きも定め無きならい也。さればまず臨終の事をなろうて後に他事をなろうべし
聖徒さんからお手紙を頂いて

とご教示されています。知恵があるから、若いからと言って生老病死の苦しみが無いわけではありません。空気を胸いっぱいに吸えるよろこびを感じなさい、一生懸命生きることをよろこびとしなさい、と日蓮大聖人は教えて下さっているのです。

Iさんは何よりもお題目を拠り所として、回復を願い祈りました。そして確かに壽量御本仏様や倶生神様が神秘の力を与えて下さったのです。法華経、お題目に依る祈りや、九識霊断法と倶生神月守の着帯を加えた信行によって病状が緩和されるケースは多々報告されています。昔も今もこの四苦八苦の苦しみは変わらずに存在しています。しかし私達にはお釈迦様・日蓮大聖人が命を懸けて伝えて下さった法華経・お題目、加えて九識霊断法や倶生神月守という多くの良薬があります。日常において心を磨き、御守護くださる神様・仏様がいるんだと自信を持って行い、私たち自身が導く仏を目指して生活していきたいものです。

※この記事は、教誌よろこび平成30年10月号に掲載された記事です。

イラスト 小川けんいち

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