日蓮聖人降誕800年
日蓮宗全国霊断師会連合会
よろこび法話 よろこび法話

#027
変化の人~覚悟の信仰~

愛知県豊田市立正教会聖徒団団長
永田 完英

法華経の第十番目、法師品に

則ち変化の人を遣わして、之が為に衛護と作さん

とあります。

いのちを助け隊

日常的によく読まれている「欲令衆」の中にもあるように、このお経文は折々で読まれるものであります。この一節は「法華経を持ち、人々に弘め伝えようとする人々に対して、杖で叩いたり、石を投げつけたりと様々な危害を加える者が現れたならば、仏様が姿を変えてその人々の前に現れ、護って下さるであろう」と意訳されます。ただ、間違っても自分にとって大きな災難が起こった時に仏様が現 れて護ってくれるというものではなく、毎日の生活の中の、些細な出来事からも「私にとっての変化の人だ」また「人は一人で生きているのではない」といった視点を持ち続けなさいというお釈迦様の御訓示であると捉えるべきなのです。

いつも盛運祈願会の日に誰よりも早く来寺して、お茶を飲みながらあぁでもないこうでもないと話をするKさん。昭和四年生まれで、今年米寿になる元気な聖徒さんです。もともと曹洞宗のお檀家さんでしたが、ご縁を頂いて当山のお檀家さんへと改宗されました。私の祖父である先代は、「寄り加持祈祷」というご祈祷方法を用いて布教をしておりました。隣村へも教宣を拡大していて、その情報はKさんの耳にも入ってきました。当時Kさんの身の回りで不可解な出来事が多く起こり、これはただ事ではないと思い、お寺に来られたのが始まりであります。先代住職がKさんのお宅でご祈祷をし、問題を解決する時に、「お題目を唱え続ける覚悟はあるか!」と大きな声で尋ねられ、それはKさんがうなずく事しか出来ないくらいの気迫だったそうです。しかし「今の自分があるのは先代のこの言葉のおかげなんだよ」とよく話していました。

ある日、Kさん宅での月回向を終え自坊に帰ってきた夕方に電話が鳴りました。「Kさんが倒れて病院に運ばれた・・・」「え?さっきはあんなに元気で一緒にお参りしてたのに・・・」しかしKさんにも変化の人が現れたのです。数日前より風呂釜の調子が悪く、ちょうどこの日に修理していた業者さんが倒れていたKさんを発見し、すぐに救急車を呼んでくれました。Kさんは二年前に奥さんを亡くされて一人暮らしをしていたので「もし業者さんがいなかったら・・・」と考えると、「Kさんは仏様に生かされたんだ」と思わずにはいられませんでした。月守を着帯し、朝晩団扇太鼓を打ち鳴らしお題目を唱えていたKさんに御本仏様は大慈大悲の大利益をお授け下さったのです。

いのちを助け隊

三ヶ月程の入院生活を終え、自宅に戻られたKさんを尋ねてみるとすっかり痩せてベッドで横になっていました。しかし「すっかり鈍っちゃったよ。でもお守のお陰で助けられた。それからこんな状況だからかもしれんが息子が手伝ってくれるようになって嬉しいんだ。」と救いと月守の有り難さを話してくれました。

日蓮大聖人御妙判「諸法実相鈔」に

我もいたし、人をも教化候へ

とあります。覚悟を決めてから、心の底から信心を起こし、そのよろこびを他の人へも伝える。これこそ日蓮大聖人のお弟子であり、聖徒であります。そしてこのKさんの信仰姿勢や行動は私にとってまさに「変化の人」であります。倶生神月守を着帯されている皆さまも悩んだり、迷ったりしている人に優しく手を差し伸べ、その人にとっての変化の人となり、みんなでよろこびを共有していける世の中を目指して参りましょう。

※この記事は、教誌よろこび平成29年1月号に掲載された記事です。

イラスト 小川けんいち

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